美しかろう

前書き

本を書こうとする時、どこから始めればいいのだろうか。正に大昔からの問題だ。私には解らないけれど、どこかから始めないと駄目なのでこれで行こうと思う。

父が大好きだった。何よりも、母よりも、弟よりも、父の方が遥かに大好きだったのだ。あの頃、父はかなり金があったので、欲しかったものは何でも買ってくれた。「幸せ」という気持ちを言えば多分私は、父との時を浮かべる。かなり後に、父は嫌われていた人で、どうして嫌われていたと知ったけれどもあの頃には父に過ぎなかったのだ。頭の素晴らしく良い父だった。いつも笑っていて、大っきい葉巻を吸っていた。その煙草の匂いのした肌をはっきり憶えてくる。